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さよならチャレンジャー

チャレンジャーは、1997年生まれ。
16年前にこの世にデビューしたが、
人間の歳でいうと、70歳ってところだろうか。
といっても、人間のような平均寿命があるわけでもなく、
人間が勝手に寿命を決めているようなところがあって、
本当はあと10年だって20年だって生きられる。

ただ、地球をもう3周半ぐらい走ったし、
自慢の赤のボディも、日焼けで白くすすけたようになってしまった。
ハンドルを回すとときどきゴリっと音がするし、
シフトチェンジするとガタンというショックもおおきい。
そしてなんといってもオーナーが家族でキャンプに行くようなこともなくなり、
どうもオーナー自身、もう一度スポーツカーに乗ってみたい、
という気持ちがでてきたらしく、
いよいよ手放されることになった。

チャレンジャーはその名前のように、アウトドアにはめっぽう強く、
世界のラリーで輝かしい成績を収めたこともある。
また、都会にも似合うスタイリッシュな外観は、SUVのはしりであったが、
あまりにストレートなネーミングが恥ずかしがり屋の日本ではKYで売れず、
たとえばオーナーのようなわざと世間ズレを狙うようなマニアにのみ
細々と受け入れられた。

チャレンジャーが乗せたのは、
オーナー家族の16年に及ぶ時間である。
オーナーの叔母が乗った。
オーナーの母が乗った。
「ずいぶん背が高くてかっこよくて、ほんと乗りづらい。」
というなんともいえない評価を下した二人は、今はもうこの世にいない。

ベビーシートに括りつけられて、
タイヤが回り出した10分後にはいつも眠りに落ちた3歳と5歳の二人の子供は、
大学生になった今でも同じように眠る。
ずっと昔からここがゆりかごだった。

いつもダッチオーブンとキャンプ道具、
バスケットボールに野球セット、バトミントンセット、
つり道具などが満載されていた荷室は、
歳を追うごとに荷物の料が減り、
今では傘とブランケットと非常用リュックがずっと放置されたように載ったままである。

運転席と助手席の間にある多目的ボックスには、
いまでは見るのも珍しいカセットテープが10本ぐらい詰まっている。
音量つまみの壊れたカセットデッキにそれを入れると、
腐ったようなクニャクニャ言う音をたてながら、
ワンピースやポケモンや名探偵コナンなどのアニメソングを歌い出す。
思い出はやはりテレビや映画にあるらしく、
音楽を聴くというより、思い出に浸るために、
以外にも再生回数は高い。

思い出というと、変なところにその痕跡が残っている。
フロントガラス左上、ガラスが曇ったときだけに現れる手形は、
前の席に座らせてもらった子供たちの歓喜の証であって、
とても人間の手とは思えないぐらい小さい。

一番運転席に座ったのはオーナーだが、次に多いのはオーナーの妻である。
そしてあちこちぶつけて傷つけたのも彼女。
最初はそのたびに直していたが、途中からは傷も思い出のひとつ、とばかり
放置状態になった。
よく見るとフロントバンパーが少しゆがんでフォグランプの位置がずれていて、
タイヤのフェンダーは擦り傷だらけで模様のようだ。

チャレンジャーの次の行き先は、海外である。
ロシアや東南アジアかアフリカか、場所は定かではないが、
どうやらこのクルマのようなアウトドアに強い日本のクルマは、
人気が出てきているらしい。
オーナーには小遣い程度の売買金が入り、海を渡っていく。
その契約が済んだばかりの昨日とおととい、
チャレンジャーは家族4人と一泊二日の最後の旅行を共にした。

向かった先は、長野県小布施。
前線が活発化した北信濃は、時おりバケツをひっくり返すような雨が降ったり、
急にキリが立ち込めて10メートル先が見えなくなるような天気だったが、
チャレンジャーは、その中を元気にキビキビと走破した。
車内ではすべてのカセットテープが次から次へと再生され、
さながらカラオケ個室のような大変な賑わいだった。
二日目、東京へ向かう関越自動車道ではさすがに疲れた家族を、
まるで赤子のようにスヤスヤと眠らせ、ジェントルに走った。
何事も無かったかのように家の駐車場に滑り込んだとき、
オドメーターは、14万7700キロを超え、
そこでエンジンは止められた。

いろいろなことがあった16年。
オーナー家族の一番忙しくてあわただしい、苦しくも楽しい時期をともにした。
家族の裏の裏まで一番よく知っているのは、このクルマかもしれない。
次はどんな家族を乗せるのだろうか?
いや、そもそももう家族を乗せるようなことはないのかもしれない。

「機械」に戻って遠くに旅に出るチャレンジャーは、
4人にとってはずっと記憶に残る家族の一員である。

さよならチャレンジャー。

16年間ありがとう。

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