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六本木のモグラ

田中康夫の「33年後のなんとなくクリスタル」が話題になっている。
そうか。
「なんクリ」が出版されてからもうそんなに経つんだなあ・・・
なんて感慨にふけっていたおととい、
もといた会社の仲のいい同期の男女7人が、
昇格祝いを兼ねて集まり、同期会を開いた。

30年前を思い出す。
初めての同期会は、新入社員の内定者パーティーで、
六本木の一戸建てのフレンチを貸切り、
必ずガールフレンドを同伴すること、を条件にした、
バブリーでゴージャスで、なんとなくクレージーなパーティーだった。

筑波の田舎から、後輩の女の子を連れて向かった僕にとって、
六本木は初めてだった。
地下鉄六本木駅を階段を上り、初めて六本木交差点に顔を出した僕は、
間違って土の中から顔を出してしまったモグラ。
煌くネオンの光線を浴び、目がつぶれた。
どっちに向かっていけばいいのか全くわからなくなってしまった。

というのも、案内状にあったどこぞのデザイナーが描いたイラストは、
超簡素なディフォルメされたもので、
それによると目的の店は、
”交差点をまっすぐ行って道が右に曲がる左側”ということになっており、
なんだ、そんなわかりやすいのなら地図なんて持たずに行ってもわかるべ、
と、地理が得意な僕は頭の中にその地図をインストールしていったのだが、
筑波にある交差点とは月とすっぽん。
あまりのネオンの煌きと人の多さに圧倒され、
インストルしたファイルはウイルスに犯されたように、
開かなくなってしまったのだ。
で、仕方ない。目の前で酒を下ろしていた酒屋のクルマの運転手に、
「〇〇〇という店はどこにありますか?」と聞いた。
すると彼は2秒ほど絶句したあと、
「あんた、聞いた相手がよかったよ。
俺のお得意さんの店だからたまたま知ってるけど、
ここどこだか知ってんの?六本木だよ?何軒店があると思ってんの?」
と呆れ顔をしたものの、
顔になじまないスーツを無理やり着て、
女の子を前にドギマギしながら東北弁をボソボソしゃべる僕が
心配になったんだろう。
紙にその店の地図を描いて、「がんばれよ!」と渡してくれた。

W大やK大やT大がひしめき、
JJから抜け出したような女の子たちの香水が充満するその密室で、
僕はいじめられてしまうのかな、と覚悟を決めたが、
都会を知らない田舎者の行動が逆に受けて、
なんとなく同期として受け入れたような安堵感があったのを覚えている。

そうか、あれから30年経つんだ。
銀座を見下ろすビルの25階にある、
タテルヨシノビズの料理は、
その夜景をお皿に描いたように美しく、
どちらかというとクールな味付けは52歳の胃袋にやさしく溶け込み、
久しぶりにフレンチをうまい、と思えた。

会社の同期は心が同期する。
あいつどうしてる?とか、腰が痛くて、とか、
そんなたわいもない中高年の会話でしかなかったけど、
立派な服を脱いで、裸で温泉に入っているような、
そんな心地よさがあって、
シャンパンと白、赤ワインと3種のお酒で、
仕事詰めで枯れつつあったグレーな心は、久しぶりに紅葉した。

考えてみたら、僕が田舎で暮らした年月より、
東京で暮らしている年月のほうが、10年も長い。
2人の子供も東京生まれの東京育ち、
一緒に参加したもと同期の妻ももちろんそうである。
僕からどんどん田舎のしみが消えていこうとしている。
が、楽しかった残響をリフレインさせながら、
店を出て冬の夜空を見上げたら、
暮れにギックリ腰で大変な目にあった忌まわしい勝浦のことが
もう懐かしい。
30年経っても、モグラはモグラだ。
みんな変わったようで変わらないけど、
僕も何も変わっちゃいない。

タテルヨシノビズ_convert_20150116101805





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